DickEY SinG

社会の狭間のノモスの探求

【杉原千畝 スギハラチウネ】ユダヤ人を救った伝説の外交官の映画は映画鑑賞が趣味の人にオススメ!!

f:id:fervent-shine:20161117214842p:plain

 歴史好きでなくとも「杉原千畝」という名は聞いたことあるかもしれない。70年ほど前の第二次大戦下でのヨーロッパで、迫害されるユダヤ人を救ったことで有名な人物だ。その杉原千畝と業績が2015年に映画化された。この手の邦画では珍しいことに国内映画ランキング2位を獲得。観てみればその理由も納得の演出と脚本だった。

映画を見るにあたって知っておきたいこと

杉原千畝はどんな人?

 杉原千畝は第二次大戦下のリトアニアで外交官を務めた人物。ロシア語に極めて堪能で声だけではロシア人と間違われるほどの腕前。満州国の外交官として活躍していたが、軍人の横暴が激しいことに嫌気がさして辞任し、日本の外務省の外交官としてフィンランド大使館員となり、その後にリトアニアの領事館領事代理となった。なお、モスクワ大使館に赴任する予定だったが、ソ連側が拒否した経緯がある。その理由が「前妻がロシア人亡命者だったから」というもの。ソ連らしいといえばソ連らしい。

舞台のリトアニアはどんな状況?

 当時のリトアニアはソ連とドイツに挟まれた、超がつくほどの弱小国。吹けば飛ぶような国だが、隣国のポーランドにドイツが侵攻。そのため、かなりのユダヤ難民がリトアニアに流れ込んできた。さらにソ連軍が当のリトアニアに侵攻。あっさり併合されてしまう。主人公 杉原千畝が活躍するのは、ソ連に併合されたリトアニアの首都?であるカウナスなのだ。

杉原千畝の業績って?

 カウナスに赴任した杉原千畝。押し寄せる大量のユダヤ人難民を目のあたりにして心は動く、「このまま何もしないでいいのか?」と。悩んだ挙句、外務省の要請を無視してユダヤ人に日本通過のビザを大量に発給し、6000人以上のユダヤ人の脱出に貢献。戦後、イスラエル政府から日本人で唯一の「諸国民の中の正義の人」に選ばれる。

 映画を見て思ったこと

視覚障害者向けの音声機能

 映画は視覚障害者向けに音声解説を導入している。冒頭の外務省シーンからその機能を発揮。目をつぶって音声だけを聞き入っていると確かに、視覚でしか伝わらない場面を上手にカバーしている。ながら鑑賞にも適しているかもしれないが、音声解説の声の違和感が健常者にとっては半端ないように感じた。解説口調はかえって聞きづらいのではないか。

CGシーンはわずかだが、その質には感嘆

満州国の大地を走る汽車やハルビンの街の風景はおそらくCGだろう、が、とてもCGだと感じさせない出来で違和感なく飲み込めた。前年に公開された映画、寄生獣の時も思ったが、日本のCGの質も上がったものだ。おかげで物語にじっくりと溶け込むことができる。CGがメインの映画は良ろしくないが、なくてはならないもの。これからの邦画に期待したい。

関東軍の横暴っぷりは盛りすぎ?

 満州国の新型列車を奪おうとソ連軍が侵入。汽車を奪おうとするが、杉原千畝は証拠を掴み、関東軍と連携して阻止する。ソ連軍一味を一網打尽にした関東軍だが、その後の対応は苛烈だった。抵抗しなければ殺さないという杉原千畝との確約を破り、ソ連軍一味をその場で銃殺。さらになぜか杉原千畝の同行者の朝鮮人やロシア人を射殺。関東軍将校は吐き捨てる、「彼らの代わりなどいくらでもいる」と。ソ連軍が抵抗して杉原千畝の同行者を殺したため、止むを得ず射殺したという筋書きらしい。当時の関東軍の横暴は凄まじいものがあったらしいが、ちょっと盛りすぎでは?と疑問に持ってしまった。なお、映画ではこのことでソ連から入国を拒否されているが、もちろん史実ではない。

 杉原千畝を演じる唐沢寿明の演技力はすごい

 「レヴェナント:蘇りし者」のディカプリオの演技は凄かった。熊との格闘シーンでのディカプリオの顔の表現技術には素直に感心するが、杉原千畝を演じる唐沢寿明の演技力も及ばずとも遠からず。泣きそうになるシーンでの顔作りは、さすが現代の名優だけあって見事だと思った。

配役に違和感があるところも

大河ドラマ、真田丸で秀吉役を務めた名脇役、小日向がドイツ大使役として出演。軍服姿を披露しているが、はっきり言って小日向の軍服姿は似合ってない。小日向さんは私の好きな俳優の一人だが、どちらかというと官僚感が溢れる人なので、そちらのほうで役を割り当ててほしかった。

隠れた第二の杉原千畝もしっかりと描いている

 「私が全責任を負いましょう!!」この言葉は主人公の言葉ではなく、ウラジオストク総領事代理の根井三郎。ビザを発給したからといっても、あくまで出発が出来たということ以上の意味はない。目的地にたどり着ける保証はこの当時あまりなかったのだが、案の定、外務省からストップがかかる。ウラジオストクで足止めされる難民だが、総領事代理の根津三郎はゴーサインをだす。このようにきっちりと影で活躍した人物にもスポットライトを当てているのもこの映画のいいところ。

 おわりに

 概ね史実通りにストーリーは進むが、脚本は独自のものがあって丹念に構築されていているなと思った。伝記物の映画はネタバレということはなく、どんな結果になるのかわかりきっているが、結果へ進むまでの流れは演出することはできる。制限が多い中でも演出と脚本はしっかりと作り込まれており、見るものを感動させてしまう映画、それが「杉原千畝 スギハラチウネ」だった。

 最近の邦画はレベルが高いものが多く、この映画もその一つだ(監督・撮影・編集はアメリカ人だが)。2時間以上ある気の長い映画でテンポも決して良いとはいえないが、その分じっくりと人物を描いていて主人公にのめり込むことができる。映画をながら見する人には合わないかもしれないが、映画鑑賞を趣味とする人なら見応えあるのではないかと思う。

過去の関連記事

fervent-shine.hatenablog.jp